今の時期になると思い出すことがある。
それは、大学生だったころの話。
いつもは自転車で通っていたのだけれど、その日は、前日に雪が降って、膝ぐらいまで積もり、その時は長靴をはいて歩いていくことにした。
夕方授業が終わり、下宿まで歩いて帰ることにしたんだけれど、狭い道路なので、除雪も去れず、まだ雪が残っていって、車の轍の跡を踏むように下を向きながら歩いていた。
あと、もう100メートルほどで、下宿につくところで、突然、民家の塀の上のほうで、何か音が聞こえた。
うん?と思っていて振り返りかけると、左肩から背中にかけてのところに何かが、ぶつかってきた。
お!?、なんだ?
積もった雪でも落ちてきたか?それとも悪戯で雪玉でもぶつけれれたか?と周りを見ても何もない。
だが、背中のほうで何かが着ていたダウンジャケットにしがみついているような感触が・・・。
後ろを見ようにも背中は見えないし、手で触るにも勇気がいる。
そういえば、さっきの物音は、猫の鳴き声だったような・・・。
仮に猫かなんかだとして、この雪の中で振り落とすのもなんだかあれだし。
はて、どうしたものか?とちょっと思案。
そうか、下宿の玄関のところで確認すればいいんじゃないのと気づき、そのまま下宿まで歩くことにした。
一体こいつは、なんなんだ?
ほんとに猫か?
このくそ寒いのに、なんで外にいるんだ?
猫はコタツで丸くなるものだろ?
しかし、猫じゃなければないで、それはそれで不気味な・・・。
などと考えながら、ぼちぼち雪の轍を踏みながら歩いていくと、下宿の隣の家の門のところにさしかかったところで、突然背中が軽くなり、何かが飛び降りたのがわかった。
おっ!と思ってすぐに見てみると、
そこには、一匹の子供の真っ黒な猫が・・・。
普通の猫のように、いったん立ち止まってこちらを振り返ってから駆けるようにそのまま門の中に入ってゆきました。
たぶん雪で家に帰れない猫がたまたま通りがかかった人を足代わりしたんでしょう。
猫も困ると人の手を借りる・・・という本当になんだかありそうでなさそうな不思議な体験でした。